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​投影

投影と自己イメージ

 

ストレスを感じる状況は、職場の人間関係や親子関係、仕事、将来への不安などさまざまありますが、そうした状況自体が必ずしもストレスとなるわけではありません。同じ状況であっても、Aさんにはストレスではないけれども、Bさんはストレスに感じるということがあります。

私たちが認知するものごとは意味から中立なものであり、それぞれの個人は、それぞれの意識のフィルターを通して外界を解釈しているので、その状況をどのように解釈するかによってストレスの度合いが変化します。

この外界の解釈の違いを生み出すひとつの要因として、自己イメージとそれを支えるビリーフがあります。

 

(1)メールが返ってこない

 

例えば、ある人が友人にメールを送ったけれども、その返信が返ってきていないとしましょう。状況としてはメールの返信が来ていないという客観的な事実があるにすぎません。この状況は意味から中立なものです。

Aさんにとっては、メールが返ってこないということは日常的な出来事のひとつであり、あまり大きな意味を持ちません。友人は忙しくて忘れているのかもしれないと思い、今度は電話をしてみるかもしれません。

Bさんとってメールが返ってこないということは「私は嫌われている」を意味します。Bさんは自動的にこの意味付けと同一化してしまうので、ネガティブな感情とストレスを経験します。

メールが返ってこないことで、自分が何か友人の気に障ることを書いただろうかと心配になったり、友人との関係を避けるようになったりします。

実際には、送信したメールは友人の迷惑メールボックスに入っていて、友人は、そのメールが来ていたことにさえ気付いていなかったとしても、その出来事に対して、人はさまざまな意味付けをします。

 

こうした状況の解釈の違いを生み出す原因のひとつに、自己イメージとそれを支えるビリーフがあります。

Aさんには「自分は尊重される」という健康的な自己イメージとビリーフがあるので、メールが返ってこなくとも、それをことさら気にすることはありません。

しかし、Bさんには「自分は愛されない」「自分は価値がない」といった制限された自己イメージとビリーフがあるので、メールが返ってこないと自分が否定されたように感じ、メールを返信しない友人の被害者になってしまいます。

Bさんには、常に自己否定的な思考パターンがあるかもしれません。

このように世界をどのように解釈するかという意味付けの背景には、そうした意味付けをする自分は何者かという自己イメージとそれを支えるビリーフがあります。

人は波動の現実しか経験できないので、人は、その人の持つビリーフのエネルギーを参照波動として現実を経験するのです。

 

(2)私は愛されない

 

また例えば、ある女性が「自分は愛されない」「私はきれいではない」といった自己イメージとビリーフを持っていたとしましょう。

この女性がカップルを見ると皆幸せそうに見えて、自分だけひとり孤独に取り残されたように感じるかもしれません。

実際には幸せそうに見えるカップルも多くの問題を抱えていたり、本当は孤独ではなく身の回りには多くの友人や家族がいるかもしれないのですが、このような自己イメージとビリーフを持つ人には、それが参照波動となるので、世界はそのように見えるのです。

 

もしこの女性が「きれいですね」と言われてほめられたとしても、素直に「ありがとう」と言えず、「嫌味を言われているのではないか」とか「馬鹿にされている」と被害妄想的に受け取るかもしれません。

また自信のない自分を取り繕うために、過剰に見栄を張ったり、着飾ったりするかもしれません。

 

(3)自分には十分な能力がない

 

また例えば、ある人が「自分には十分な能力がない」という自己イメージとビリーフを持っていたとしましょう。

もしこの人が上司から重要な仕事を任されたとしたら、それがとても難しいもののように見えて必要以上に緊張してしまうかもしれません。

また、この人が、しばらくして上司から「任せた仕事はどうなっている?」と仕事の進捗状況を聞かれたとしたら、それがまるで仕事が遅いと自分を非難しているように聞こえて、その上司に対して反感を感じるかもしれません。

また、定時に帰宅する同僚を見ると、楽をしているように思えて腹が立ったり、残業している自分に対して仕事ができないダメなやつという自分を非難するような思いが湧いてくるかもしれません。

 

このように自己イメージとそれを支えるビリーフは意識のフィルターとして機能し、人はこのフィルターを通して状況を解釈するので、そのフィルターがネガティブなものであると不安、緊張、悲しみ、寂しさ、不満、怒りなどの感情を経験します。自己イメージとそれを支えるビリーフはエネルギーとして波動の現実を作り出し、自分が投影したものを自分で受け取るのです。

さらに、こうしたネガティブな感情には向き合いたくないので、人はお酒や過食といった方法を使って抑圧します。ネガティブな感情は抑圧されればされるほど強くなり、外側の世界により濃い投影として映し出されます。すると、状況はますます悪くなるように見えます。

 

 

波動レベルと投影の関係

 

意識の波動が上昇し、自分が劣等感を抱いている点なども含め、ありのままの自分を受容できるようになると自己肯定感が高まります。それは、その人の業績や地位や容姿など、その人の持つ客観的な要素とは無関係に、ただそうあるままの自分自身を無条件に受容することによって生まれる肯定感です。

この自己肯定感が備わると、「自分にはパワーがある」「自分には価値ある」といった肯定的なコアビリーフが強化されるので、自己イメージが高まり、より肯定的な投影が起きます。全般的に世界は友好的で、生きるに値する豊かな場所に見えるでしょう。

 

一方、意識の波動が粗く認知の対象物に抵抗することが多くなると、他人と比べて自分の不得意とする点や悪いものとして否定した点などが、実際に自分の価値を貶めているように感じられ、自己否定的な思いが強くなり自己肯定感が低下します。

実際には、私たちは存在するというだけで無限の価値を有しているのですが、意識の中に分離や拒絶の波動があると、自分は劣ったものであるといった観念との同一化が起き、同時に「自分は無力である」「自分は無価値である」といった制限されたコアビリーフが真実として力を持つこととなり、自己イメージが低下し、負の投影が起きます。

 

自己イメージが制限されたものであると、世界は生きることがとても困難な場所に見えるので、仕事上の業務をこなすことが理由もなく難しいことのように思えたり、劣等感や無価値感を感じてオープンな人間関係を築くことに困難を感じたりします。

また、誰かに非難されているような投影や搾取されているような投影を生み出し、被害者意識を持つこともあります。

自分で自分を否定すると、他人のことも否定的に捉えるようになるだけではなく、自己イメージが低下し、他人からも見下されているように感じたり、尊重されていないように感じるのです。

 

これまでの一般的な人の意識レベルである二元性の分離の意識領域においては、初期設定として「自分は無力である」「自分は無価値である」といったようにコアビリーフに制限が付くため、ネガティブな投影が力を持っていました。生きることがとても苦しく感じるのも当然だったのです。

しかし、今、人々は次々と目覚め始めていますから、今後は、より前向きな投影が増えていくでしょう。

 

 

投影と抑圧

 

制限的な自己イメージが負の投影を生み出すように、その人の否定しているものや抑圧しているものも負の投影の原因となり、ネガティブな感情を経験する原因となります。

 

例えば、自分は太っているということを気にしていない人にとっては、自分は身長何センチ、体重何キロであるという事実があるにすぎません。

一方で同じ背格好であっても、太っていることをダメなこととして否定している人にとっては、それは負の投影を生み出す意識のフィルターとして機能します。

例えば、他人の体形が過剰に気になったり、他の太っている人を非難したり、太っているということが自分の価値を貶めているように感じられたりします。

 

他にも、自分の収入が低いことをダメなこととして否定している人にとっては、それが意識のフィルターとして機能することとなり、他人の収入がとても気になったり、自分は無能だと解釈する要因となったり、経済的に自立していない他の人を怠け者として非難する要因になったりします。

同じ収入でもそれを否定せず気にしていない人にとっては、それが判断の要因として意識に上がってくることはありません。

 

このように人は自分の否定しているものを自分の外側に投影します。

世界は意味から中立なものですが、自分の外側に否定的なものが見えるとき、自分の中に否定しているものがないか探ってみる良い機会となります。

投影の原因を探るプロセスの中では、潜在意識に埋もれていたような記憶や感情が、癒しを求めて浮かび上がってくるかもしれません。

 

 

投影とトラウマ

 

その人の経験したことは、その人の世界の認知の仕方に大きな影響を与えるので、過去に辛い経験をしたりトラウマを受けたりすると、負の投影を生み出す原因になります。

特に子供の頃に育った環境は、その人の人格の形成にとても重要な影響を与えるので、例えば、親族間であまり仲の良くない家庭で育ったような人は、潜在意識の中に人に対する不信感が刷り込まれ、世界はとても危険な場所に見えるかもしれません。

また、親からネグレクトされたり虐待を受けるなど十分に愛されなかった子供は、自己肯定感が育たず、制限された自己イメージを持つようになるので、ネガティブな投影をする傾向があります。

その他にも辛い過去の経験は、人の意識のフィルターに恐怖や不安、ネガティブな思い込みを作り出すので、生きることがとても苦しく感じる原因となります。

 

 

投影の起源を探り、癒す

 

自分の外側にネガティヴなものが見えるとき、それは固着した観念の囚われや低い自己イメージ、制限されたビリーフ、感情の抑圧、トラウマなどが原因であることがあります。

こうした原因を探っていくと、その原因を作り出した過去の経験のエネルギーがあります。それは幼少期の家庭環境であったり、過去生から持ち越したエネルギーであったりします。

そのエネルギーには観念や感情、記憶、身体感覚などが付着しており、セラピーの技法を使って解放することのできるものです。

ネガティブな投影の起源を癒すプロセスとは、自分の心の中を深く見つめ、普段見ることを避けてきた心の闇と向き合うという作業です。

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