感情解放テクニック
EFT・Emotional Freedom Technique
EFTとは何か
感情解放テクニック(通称EFT、またはタッピング)とは経絡のツボを使った心理療法です。解決したいと思う感情的問題に意識を向けながら、顔や鎖骨などのツボをトントンと叩きます。
「問題を意識する+ツボを叩く」という手順の組み合わせにより固着していた感情エネルギーの流れを回復し、トラウマや恐怖、感情の痛みを取り除くことができます。
やり方はとても簡単で、1人でできますし、安全で副作用もありません。

ゲアリー・クレイグ
EFTの始まり
タッピングの始まりは、1980年に起きた米国のロジャー・キャラハン博士の偶然の発見でした。キャラハン博士は心理学者でしたが、同時に中医学にも関心をよせており経絡とツボの研究も行っていました。
そのような博士のクライアントに極度の水恐怖症の女性がおり、標準的な心理療法の治療を施してもどうしても改善しなかったものが、ツボの刺激を試みたところ、劇的な改善を見せたことからタッピングの研究が始まりました。
キャラハン博士は症状ごとに複雑なタッピングの手順を開発しましたが、博士の下で学んでいたゲアリー・クレイグ氏が、その手順を簡略化し、多くの人が簡単に使えるようになりました。
EFTの効果
負の感情の解放
タッピングの主要な効果は、負の感情を早急に解放し、その効果が永続するという点にあります。
これまでの心理療法ではトラウマ、恐怖、不安といった負の感情をコントロールすることは容易ではありませんでした。トークセラピーや暴露療法、薬剤などを用いたとしても、改善するのにとても多くの時間を要したり、改善したとしても、その効果は限定的なものでした。
そのため心の傷から回復するのは容易ではなく、事故や暴力などを原因としたトラウマや辛い感情からの逃避行動であるアルコールなどへの依存症、児童虐待の世代間連鎖などは、事実上、解決が不可能であったといえます。
飛行機や電車の中、昆虫や水など特定のものごとへの恐怖や不安など、冷静に判断すれば危険ではないはずのものへの不合理な恐怖や不安もまた同様といえます。
タッピングは、負の感情の根本的な原因は生命エネルギーの混乱であると捉え、それに働きかけることで、こうした問題を早急に解決します。
身体症状の緩和
近年、腰痛などの慢性痛、線維筋痛症など難治性の身体の痛みの背景に滞った感情の問題があることが認知されるようになりました。器質的な問題がないのに長期に渡って体の痛みが引かないといった問題がある場合、その身体の痛みの背景に、トラウマや痛みへの恐怖、低い自己評価など、感情の問題がある場合があります。
タッピングは、身体の痛みの感情的原因を探り、痛みを緩和するのに役立ちます。
ビリーフと投影の変容
人は「自分には価値がない」「自分には力がない」「自分は愛されない」といったリミティング・ビリーフ(自己制限的な信念)をたくさん持っています。
こうした信念はストレスの多い現実を作り出すだけではなく、人はこうした信念を投影して現実を解釈するので、世界は分離していて、危険で、満たされない場所のように思え、恐怖や不安、孤独、嫌悪感といった感情を経験することになります。
こうしたビリーフを持つようになった背景には、両親の不和や虐待など幼少期の過酷な環境やトラウマがあることが多く、こうした過去の記憶に付着した感情の痛みを癒すことで、より健全で肯定的な自己イメージを持てるようになります。
EFTの手順 ベーシックレシピ
1、問題を特定する
辛い記憶や恐怖、悲嘆、罪悪感、不安などのネガティブな感情、身体の痛みなど具体的な問題を心に思い浮かべます。これはベーシックレシピを行う際のターゲットになります。
2、問題の強度を測る
0から10までの数字でタッピングを行う前の問題の強度を測ります。
感情的な問題について心の中で思い浮かべ、その不快感を測ります。肉体的な問題については、今感じている痛みや不快感を測ります。10が最悪の状態、0が問題をまったく感じない状態です。
これはベーシックレシピを行った後にどれだけ問題が改善されたかを示すベンチマークになります。例えば、もし8で始まり4まで下がったとしたら、問題が50%改善されたことになります。
3、セットアップ
セットアップは一連のタッピングの手順の初めに行います。簡単な問題を特定するフレーズを作り、空手チョップポイントをたたきながらそれを言葉にします。これによりエネルギーシステムにこれから何について取り組もうとしているのかを知らせ、かつ、心理的逆転を修正します。
セットアップに使うフレーズは次のようなものです。
「私は_______があるけれども自分自身を深く完全に受け入れます」
________の部分には取り組む問題を入れます。
例えば、肩の痛みであれば、
「私は肩が痛いけれども、私は自分自身を深く完全に受け入れます」
クモ恐怖症であれば、
「私はクモが怖いけれども、私は自分自身を深く完全に受け入れます」
4、タッピング・シークエンス
頭頂のポイントから下に向かって順に各ポイントを数回ずつタッピングしていきます。
眉頭のポイントのように、いくつかのタッピングポイントは体の両側に二か所ありますが、タッピングするときは、その両方をタッピングしても、どちらか一方をタッピングするだけでもかまいません。
まず左手の空手チョップポイントをタッピングして、次に右の眉頭のポイントをタッピングするといったように、一回のラウンドで体の左右のポイントを変えても問題ありません。
タッピングしている間、意識を問題にチューニングし続けるため、タッピングしながらリマインダーフレーズを唱えます。リマインダーフレーズはとてもシンプルで、短い言葉で問題を特定するだけです。タッピングをしながら例えば次のような言葉を唱えます。
「肩の痛み」「クモが怖い」
ネガティブな感情が湧き上がるのは、特定の問題に意識の焦点をあわせた結果、身体のエネルギーシステムに混乱が生じるからです。問題について考えることでエネルギーの混乱を引き起こし、その混乱した状態でタッピングを行い、エネルギーのバランスを取り戻します。
問題に意識を集中し、エネルギーに混乱を起こさない限りタッピングを行っても何の変化も起りません。
リマインダーフレーズは、タッピングを行う最中に問題に意識を集中し続け、エネルギーの混乱を引き起こす助けになります。
5、再び問題の強度を測る
最後に0から10のスケールで問題の強度を測り、この数字とタッピングを行う前の数字を比較して、どれだけ問題が改善されたかを確認します。もしゼロになっていなければゼロになるか、もしくは一定の数字から下がらず横ばいの状態になるまでベーシックレシピの手順を繰り返します。
タッピングを行ったすべて問題について、その数字の経過を記録しておきましょう。
後日その記録を見返したとき、多くの問題が解決しており、すでに忘れてしまっていることに気付き、きっと驚くでしょう。
タッピングポイント

KC: 空手チョップポイント(the karate chop point)
空手チョップをする手の側面
後渓(こうけい・SI03)
:手の太陽小腸経
TH: 頭頂(the top of the head)
頭のてっぺんの部分
百会(ひゃくえ・GV20)
:督脈
EB: 眉頭(the beginning of the eyebrow)
眉の鼻に近い端の部分
攢竹(さんちく・BL2)
:足の太陽膀胱経
SE: 目の横(the side of the eye)
目の外側の骨の部分
瞳子髎(どうしりょう・GB1)
:足の少陽胆経
UE: 目の下(under the eye)
瞳の2~3センチ真下の骨の部分
承泣(しょうきゅう・ST1)
:足の陽明胃経
UN: 鼻の下(Under the nose)
鼻と上唇の間の部分
水溝(すいこう・GV26)
:督脈
禾髎(かりょう・LI19)
:手の陽明大腸経
CP: あご(chin point)
あごの先と下唇の間の部分
承漿(しょうしょう・CV24)
:任脈
CB: 鎖骨(collar bone)
鎖骨の体の中心に近い端の部分
兪府(ゆふ:Kl27)
:足の小陰腎経
UA: 脇の下(under the arm)
脇の下から10センチほど下
大包(だいほう・SP21)
:足の太陰脾経